EyeLogic InsightLabユーザーガイド

EyeLogic InsightLabは、視線情報を伴う研究・実験をカバーすることのできる包括的なソフトウェアツールです。このソフトウェアでは、実験の設計、視線データの集録、個別および集約した視線データの解析、データの視覚化、そしてデータの保存などが可能になります。視線軌道、ヒートマップに加えて 視線の停留やサッカード運動などの解析に最適です。心理学、神経科学、ヒューマンファクター、ユーザビリティテスト、市場調査など、様々な研究分野の実験にお使いいただけます。

InsightLabを使用するためには EyeLogic視線入力デバイスとInsightLabのライセンスが必要となります。はじめてEyeLogic視線入力デバイスをお使いの方は 最初にEyeLogic視線入力デバイススタートアップガイドをご覧ください。

目次

    インストールとアクティベーション

      1. InsigthLabのインストール

      まず、InsightLabをインストールする前に コンピューターにEyeLogic Serverが既にインストールされ EyeLogic視線入力デバイスが正常に動作することを確認して下さい。(※もしまだEyeLogic視線入力デバイスのセットアップをしていない場合は まずEyeLogic視線入力デバイススタートアップガイドをご覧ください。)

      ダウンロードされたInsightLabのWindowsインストーラー「InsightLab_1.0.0.msi」(バージョン番号1.0.0はバージョンによって異なります)を実行し、表示されるダイアログのインストール手順に従ってください。インストールを完了するには、途中表示されるライセンス条項に同意する必要があります。インストールが完了すると、実験設計や解析に必要なすべてのコンポーネントがインストールされ デスクトップ画面に「InsightLab」というアイコンが現れます。外部センサー(視線入力デバイスなど)や追加パッケージを使用する場合は、別途オプションをインストールする必要があります。

        2. InsightLabのアクティベーション

          InsightLabを使用するにはライセンスが必要です。購入後に利用可能なライセンスは、InsightLab User Space (https://www.eyelogicsolutions.com/user/)のページで確認できます。1つのライセンスで、1台のPCにインストールして使用することができます。InsightLabを使用するためには まずライセンスのアクティベーションをおこなってください。

          1. PCがインターネットに接続されていることを確認します。
          2. InsightLabを起動します。ライセンスページが表示され、そこにログイン情報を入力する欄があります。
          3. InsightLab購入後に提供されたユーザーIDとパスワードを入力しアクティベーションをおこないます。 アクティベーションが成功した場合、ライセンスのステータスが「Software is activated」となり、InsightLabにライセンス所有者の情報が表示されるようになります。

          これで、InsightLabの使用が可能になります。一度アクティベートされると、ライセンスが有効である限りInsightLabは起動時にユーザーIDの入力は要求しません。またライセンスの認証はオンラインでおこなわれますが InsightLabの使用に常時インターネット接続を必要とするわけではありません。InsightLabでは定期的にオンラインでライセンスの有効性を確認しています。

           

            実験プロジェクトの作成

            新しい実験プロジェクトの作成

            InsightLab  を起動すると まず「Projects」  タブが開きます。ここでは新しいプロジェクトを作成したり、既存のプロジェクトを開いたり、編集、削除することができます。このプロジェクトが各実験の設計、実行、解析までの情報を含んでいます (※InsightLabのバージョンの違いによって ボタンなどの表記が若干異なりますのでご了承下さい。)

            「Add New Project」をクリックします。

            これにより「New Project」というプロジェクトが加わります。

            「Open」のボタンをクリックすることで「Settings」画面が開き、「Project Name」のフィールドに任意のプロジェクト名を付けることが出来ます。

            既存のプロジェクトを開く

            既存のプロジェクトを開くには、「Projects」のタブ画面から対応するプロジェクトの「...」ボタンをクリックして ドロップダウン メニューの「Open」を選択するか、プロジェクト自体をダブルクリックしてください。

            プロジェクトの名前を変更

            プロジェクトの名前を変更するには、「Projects」のタブに表示されている各プロジェクトのプロジェクト名の部分をダブルクリックするか、プロジェクト名の部分を右クリックして「Edit」を選択します。前述のように「Settings」画面から名前を変更することも可能です。 

            プロジェクトの削除

            既存のプロジェクトを削除するには、Projects」のタブ画面から対応するプロジェクトの「...」ボタンをクリックして ドロップダウン メニューの「Delete」を選択することで削除することができます。

            実験の設計と編集

            設定

            「Experiment Settings」タブでは、実験プロジェクトのプロパティを表示および変更をすることができます。

            Project Nameプロジェクトの名前が表示されます。このフィールドでプロジェクトの名前を変更することができます。

            Project Location ローカル  ディスク上でプロジェクトが保存されているファイルパスが表示されています。ただしファイルパスの変更はできません。右側のフォルダアイコンをクリックすることでWindowsのファイルダイアログが開きます。バックアップの目的で、このフォルダーの内容をコピーすることはできますが、プロジェクトが破損する可能性もありますので 内容を削除または変更しないように注意してください。

            Experiment Version実験プロジェクトの最新バージョンを表示します。

            Data Sources:利用可能なすべての外部センサー(例 視線入力デバイス)  を表示します。対応するソースの横のチェックボックスにチェックを入れると、ソースが有効になります。 チェックされたデータソースは実験では必須となり、実験の実行時にこのデータソースからデータが取得されます。

            Continue condition視覚刺激(Stimulus)から次の視覚刺激へ移行するためのアクション条件です。経過時間や特定キーのキープレスを設定できます。デフォルトはスペースキーです。

            Abort condition実験途中で実験を終了するためのアクション条件です。「Continue condition」と同様に経過時間や特定キーのキープレスを設定できます。デフォルトのアクション条件はCTRLキー + Qキーです。実験が中止されると、集録中のデータは保存されませんのでご注意ください。

            実験の設計

            「Design」タブをクリックすると「Experimental Design」という画面が表示されます。 ここでは、キャリブレーションや視覚刺激を含む 実験のワークフローの設計をすることができます。

            Experimental Design」の画面には アイコンを線でつないだようなダイアグラムが見えます。この画面で実験中の視覚刺激の順番やランダム化、または視線入力デバイスのキャリブレーションや検証などのステップを定義することができます。実験のワークフローは、隣り合うノードとよばれる白い長方形と線で結ぶことで作られます。実験は「Start」というノードからはじまり、「End」というノードに到達するまで その間にあるノードが順番に実行されます。

            ノードの種類は以下の通りです:

            Start実験の開始点

            Endこのノードに到達すると実験は終了します。

            Stimulus 提示される視覚刺激をカスタマイズすることで画面表示する内容を設定できます。 

            Calibration 視線入力デバイスのキャリブレーションや検証をおこないます。

            Randomizerこのノードの中に「Stimulus」などのノードをドラッグアンドドロップすることで視覚刺激の順番をランダム化させることができます。「Stimulus」以外に「Calibration」ノードも「Randomizer」に追加することができます。

            新しいノードを追加するには、「Experimental Design」画面の左側にあるノードをクリックすることで ダイヤグラムにノードが配置されます。ノードを接続するためにはノードの左右にある白い丸の端子に線をつなぎます。左側の端子が入力端子で右側の端子が出力端子です。ノードの出力端子を左クリックして 別のノード入力端子にマウスをドラッグすると端子の接続ができます。また既に接続されている線を消去する場合は 接続されている端子をシングルクリックすることで線を消去することができます。ノードの消去は 消去したいノードを選択した状態でDeleteキーを押せば ノードを削除できます。

            視覚刺激コンテンツ

            Stimulus」ノードは実験の実行中 被験者に表示される刺激コンテンツを設定できます。そのコンテンツは、テキスト、画像、質問フォームなど様々です。

            Stimulus Design」の画面にアクセスするためには以下の方法があります。

            • Stimulus」ノードをダブルクリックする。
            • Stimulus」ノードを選択した状態にしておいて ダイアグラム上部にある「Stimulus Design」ボタンをクリックする。

            これにより「Stimulus Design」の設定画面が開きます。ダイアグラムのある「Experimental Design」の画面に戻すには 上の画像の「Stimulus Design」ボタンの左隣にある「Experimental Design」をクリックしてください。 

            Stimulus Design」の画面を表示すると 以下のような表示項目を確認できます。 それぞれの項目の説明は以下の通りです。 

            Selectedアクセスしている「Stimulus」ノードの名前が表示されます。

            Add New Element実験中に視覚刺激として表示するコンテンツを新たに追加できます。 選択できるコンテンツは以下の通りです。

            • Image(画像)
            • Text(文字・テキスト)
            • Question(マークシート形式の質問フォーム)
            • AOI(興味関心領域)

            AOIは視覚刺激のコンテンツというより むしろ視覚情報を解析するためのものになります。詳細は後述の解析機能のセクションをご覧ください。 

            Background Color視覚刺激コンテンツの背景色を選択できます。

            Position Properties視覚刺激コンテンツの位置を変更することができます。

            Add New Element – 画像

            視覚刺激コンテンツとして画像を追加するには、「Add New Element」の下にある「Image」というボタンをクリックします。 するとファイルダイアログが開き、コンピューターに保存されている画像ファイルを選択することで画像を配置することができます。ここでサポートされている画像ファイルはJPGJPEG)とPNGファイルです。

            選択された画像は表示画面の中心に配置され マウスのドラッグで位置を調整することができます。また画像コンテンツの四方の境界線にある白丸の部分をマウスでドラッグすることで形状やサイズを変更することも可能です。

            Add New Element – テキスト

            視覚刺激コンテンツとしてテキストを追加するには、「Add New Element」の下にある「Text」というボタンをクリックします

            配置されたテキストコンテンツをクリックすると、文字サイズや太字やイタリックのような書体を変更することもできるようになります。またテキストコンテンツをダブルクリックすることで、テキスト自体の編集も可能となります。

            Add New Element – 質問フォーム

            コンテンツとして質問フォームを追加するには、「Add New Element」の下にある「Question」というボタンをクリックします。

            質問フォーム内の見出しと各回答のラベルは その文字の上をダブルクリックすることで編集可能です。この質問フォームは最大 5つの回答選択肢を持つことができます。選択肢の数を減らしたい場合は、回答ラベルのテキストの部分を削除しておくと(画面上には[unused]と表示されます)、実行された実験では その回答選択肢は表示されなくなります。

            Add New Element – AOI

            コンテンツとしてAOIを追加するには、「Add New Element」の下にある「AOI」というボタンをクリックします。そして表示画面上の任意の場所に配置します。

            AOI コンテンツ を配置したら、そのAOI  をダブルクリックすると AIO 名前を変更したり、形状や領域サイズの変更などをおこなえます。AOIは他の視覚刺激コンテンツとは異なり実験中に可視化されることはありませんが 実験中、視線がどれくらいの割合でAOI領域内にとどまっているかなどの視線解析を行うために使用します。

            実験の実行

            Run」のタブをクリックすると下の画像のような画面になります。この画面から実験を実行させることができます。 

            実験を実行する前に、視覚刺激を表示するモニターの設定をする必要があります。 もし複数のモニターをお使いの場合は「Monitor Setup」で視覚刺激を表示するモニターを選んでください。強調表示されたモニターに視覚刺激コンテンツが全画面表示されます。

            Run Experiment」の部分のテキストボックスには、最初に「P...」で始まるランダムに生成されたレコードIDが表示されます。InsightLabでは実験中の視線データや表示された視覚刺激などが記録されたログデータが保存されます。このレコードIDはその時実行した実験のログデータの名前にも使用されます。詳しくは後述の「実験の記録」のセクションを参照ください。

            Dry Run」は実験のテストラン機能です。「Dry Run」のボタンをクリックするとプロジェクトの実験は実行されますが 実験のログデータは記録されません。接続されている視線入力デバイスなどのセンサーも本番の実験と同様に動作をしますが データは記録されませんのでご注意ください。

            Run Recording」が実験の実行ボタンです。「Run Recording」ボタンをクリックすることで実験が実行され その実験のログデータがInsightLabに記録されます。センサーが接続されていないなど準備が整っていないと、実験は開始されません。

            Sensor Setup」には利用可能なすべてのセンサー(例 視線入力デバイスなど)が表示されます。各センサーの右上部分には有効/無効のスイッチがありますが デフォルトでは無効になっています。実験を開始するとセンサーは自動的に有効になりますので このスイッチを手動で有効に切り替える必要はありません。ただし実験を開始する前にセンサーのテストを行う必要がある場合は 実験前にこのスイッチを手動で有効にしてセンサーのテストを行うことができます。 

            実験の記録

            Recordings」のタブをクリックすると 過去に実行した実験のログデータのリストが表示されます。 画面右下の「Export」ボタンをクリックすると チェックマークで選択されたログデータを「.csv」または「.xlsx」ファイル形式のデータとしてエクスポートすることができます。

            実験データの解析

            Analysis」タブの画面には、左側にログデータのリスト、中央に解析パネル、右側に視覚刺激のリスト、上部に解析ボタンが配置されています。そのリスト内の視覚刺激をクリックすると、その刺激の画面が解析パネルに表示されます。

            上部の解析ボタンを使用すると、解析パネルに表示されている視覚刺激に対してさまざまな解析をおこなえます。 2023年現在のバージョンでは4  種類の解析機能が存在します。

            Raw Path 選択されたすべてのログデータの視線情報の軌跡がそのままプロットされます。

            Scan Path 選択されたすべてのログデータから視線の停留とサッカード運動を表示します。

            KPI KPIとはKey Performance Indicatorのことで 視覚刺激に配置されたAOIに対する視線解析結果を表示します。

            Heat Map 選択されたすべてのログデータから視線のヒートマップを表示します。

            詳細については、後述の解析機能のセクションを参照してください。

            ログファイルの選択

            InsightLabの解析では 1 つのログデータからだけではなく 複数のログデータを同時に使用して解析をおこなうことが可能です。どのログデータを使用するかは、ログデータリスト内の左側のチェックボックスにチェックマークを入れることで選択することができます。

            プレイバック機能

            ログデータに記録されるすべての情報やイベントにはタイムスタンプが付いています。下の画像にある制御器を使用することで 被験者の視線の軌跡を解析パネルにプロットさせながら実験中の視線の動きを再現させることができます。この制御器には「再生」/「一時停止」、「開始にジャンプ」、「終了にジャンプ」の機能があります。また制御器の下の部分にあるスライダーをマウスで動かすことで 特定の時間の視線情報を抽出することもできます。

            解析機能 - Raw Path

            Raw Path」ボタンをクリックすると 実験中に視線入力デバイスから集録された被験者の視線位置の生データが 解析パネル上に視線位置の軌跡として表示されます。 

            解析機能 - Scan Path

            Scan Path」ボタンをクリックすると 実験中に視線入力デバイスから集録された被験者の視線データから推定される眼球運動の情報を解析パネル上に表示することができます。ここで表示される眼球運動はサッカード運動、停留、そして停留持続時間です。

            サッカード運動は線で表され、停留は円で表されます。また停留の円の大きさによって停留持続時間の長さを表しています。

            解析機能 - KPI

            Scan Path」ボタンをクリックすると 事前に定義されたAOIに対する視線情報の解析結果が表示されます。KPIを表示させるには 少なくとも1つのAOIが配置されている必要があります。AOIの位置は解析パネル上でも手動で動かすことが可能です。しかしAOIを移動させた場合のKPI結果は 事前に定義されたAOIに対するKPI結果とは異なってしまいますので 複数の実験結果を比較評価する際は 取り扱いに注意をしてください。

            解析機能 - Heat Map

            Heat Map」ボタンをクリックすると 実験中に視線入力デバイスから集録された被験者の視線データから推定される視覚的な注目エリアと注目してないエリアを示すことができます。この表示方法をヒートマップと呼び 注目度のレベルも色合いによって表現します。特定の部分に注目して視線をおくる頻度と その停留持続時間に応じてヒートマップは形成されます。