cEEGrid耳脳波電極キットセットアップガイド
このチュートリアルでは、cEEGrid耳脳波電極キットとOpenBCI Cyton集録ボード(16チャンネル)を使用して脳波測定システムを実現する方法について解説します。
OpenBCI Cyton集録ボードをはじめて使う方は まずOpenBCI Cytonスタートアップガイドをご覧下さい。
目次
必要なもの
- cEEGrid耳脳波電極キット 1個
- OpenBCI Cyton集録ボード(16チャンネル) 1個 ※別途購入が必要
1. cEEGrid耳脳波電極キット
2. OpenBCI Cyton集録ボード(16チャンネル)
cEEGrid耳脳波電極キットの組み立て
cEEGrid電極を使った脳波測定システムは主に3つのコンポーネント:(1) 生体信号(EEG、ECG、EMGなど)を集録するデータ集録デバイス、OpenBCI Cyton集録ボード(2)被験者の耳の周りに電極を配置することのできるC字型のプリント電極、cEEGrid電極、(3)OpenBCI Cyton集録ボードとcEEGrid電極を接続するアダプタ&ケーブル、これらから構成されています。
チャンネルの選択
cEEGrid電極を使用して脳波測定をする前に、まず cEEGrid電極のどの電極をOpenBCI Cyton集録ボードのどのチャンネルに使用するか選定する必要があります。 cEEGrid電極は2個(右耳用、左耳用)で1組となっており 各cEEGrid電極にはそれぞれ10個の電極が装備されています。一方 OpenBCI Cyton集録ボードは最大16チャンネル(それに加えREF電極とGND電極)であることから cEEGrid電極の計20個の電極の中からどの電極をOpenBCI集録ボードのチャンネルピンに接続するかを決定しなくてはいけません。cEEGridの電極レイアウトはお客様によって自由に決められますが 下の画像は米国OpenBCI社の推奨している電極レイアウトとなります。
上記のレイアウトの場合 cEEGrid電極上のL3とR3の電極を使用せず、電極L6をREF電極、そして電極R6をGND電極として使用します。これにより耳まわりに比較的均等に電極を配置することが出来るようになります。
OpenBCI集録ボードと上記のcEEGrid電極レイアウトは以下の論文でも使用され 検証をされています。
Knierim, M. T., Berger, C., & Reali, P. (2021). Open-source concealed EEG data collection for Brain-computer-interfaces - neural observation through OpenBCI amplifiers with around-the-ear cEEGrid electrodes. Brain-Computer Interfaces, 8(4), 161–179.ケーブルの接続
上記の画像の電極レイアウトでcEEGrid電極とOpenBCI Cyton集録ボードをケーブルで配線します。まず左耳用cEEGrid電極をOpenBCI集録ボードのチャンネル 1 ~ 8 に、そして右耳用cEEGrid電極を OpenBCI集録ボードのチャンネル 9 ~ 16(デイジーモジュール上のチャンネル)に接続します。
下の画像のようにケースにはピンアダプタが配置されており 左側のアダプタは左耳用のcEEGrid電極に使用され OpenBCI Cytonボードの本体と接続します。そして右側のアダプタは右耳用のcEEGrid電極に使用され OpenBCI Cytonボードのデイジーモジュールと接続します。
REF と GNDを接続するため まずOpenBCI Cyton集録ボード(16チャンネル)に付属されているY字ケーブルのメス端子をOpenBCI Cytonボード(本体)のREF(SRBの下段ピン)に接続します。そして「チャンネルの選択」の配線図をもとに そのY字ケーブルのオス端子を付属のケーブルのメス端子と接続し そのケーブルの反対側のメス端子を左側のアダプタのL6のピンに接続します(アダプタにピンのラベル表記がないため 配線図を確認しながら上から何番目のピンかを確認してください)。続いて普通のケーブルを使ってOpenBCI Cytonボード(本体)のGND(BIASの下段ピン)を右側のアダプタのR6のピンにつなぎます。 これによりOpenBCIボードは下の画像のような見た目になります。
付属されているケーブルを使い まだ接続されていないOpenBCI Cytonボード(本体)の残りのピンと左側のアダプタを以下のような組み合わせで配線します。 アダプタにケーブルを接続しにくい場合は アダプタをケースから取り出してから ケーブルを接続してください。アダプタがはまっているケース部分を指で少し広げてあげると取り出しやすくなります。
チャンネル |
Cyton(本体)のピン |
cEEGrid(左側)のピン |
チャンネル1 |
N1P下段 |
L1 |
チャンネル2 |
N2P下段 |
L2 |
チャンネル3 |
N3P下段 |
L4 |
チャンネル4 |
N4P下段 |
L5 |
チャンネル5 |
N5P下段 |
L7 |
チャンネル6 |
N6P下段 |
L8 |
チャンネル7 |
N7P下段 |
L9 |
チャンネル8 |
N8P下段 |
L10 |
続けて OpenBCI Cytonボード(デイジーモジュール)のピンと右側のアダプタを以下のような組み合わせで配線します。
チャンネル |
Cyton(デイジーモジュール)のピン |
cEEGrid(右側)のピン |
チャンネル9 |
N1P下段 |
R1 |
チャンネル10 |
N2P下段 |
R2 |
チャンネル11 |
N3P下段 |
R4 |
チャンネル12 |
N4P下段 |
R5 |
チャンネル13 |
N5P下段 |
R7 |
チャンネル14 |
N6P下段 |
R8 |
チャンネル15 |
N7P下段 |
R9 |
チャンネル16 |
N8P下段 |
R10 |
その後 OpenBCI Cytonボード(本体)を以下の画像のようにケースの上に載せたうえで ケースの上部カバーをかぶせます。接続されているケーブルがボードの下に格納するよう配線の調整をし デイジーモジュールも本体ボードに無理なく接続できるような向きにしてから上部カバーをかぶせてください。
OpenBCI Cytonボード(デイジーモジュール)の裏面のピンをケース上部に突き出している端子に接続し OpenBCI Cytonボード本体とデイジーモジュールを重ね合わせます。 そしてY字ケーブルのもう一方のメス端子をOpenBCI Cytonボード(デイシーモジュール)のSRB下段のピンに接続します。
バッテリーの接続
電源には、400~500mAh のリチウムイオン充電式バッテリーパックを使用します。(バッテリーはOpenBCI Cyton集録ボードに付属されています) 下の画像のようにケースの底部からアクセスできるJST-PH コネクタにバッテリーのケーブルを差し込みます。 その後、底部カバーの凹の部分にバッテリーを収納します。
帽子・ヘッドバンドへの取り付け
安定した耳脳波を集録するためには 配線済みのOpenBCI Cyton集録ボードを被験者の頭部に取り付ける必要があります。 cEEGrid耳脳波電極キットにはヘッドバンドと帽子が付属されていますので デバイスのケース底部カバーの出っ張っている部分を ヘッドバンドまたは帽子に引っ掛けて取り付けます。
cEEGrid電極の準備
一般的なEEGキャップの電極では Ag/AgCl メッキが多く使用されていますが、当社が販売しているcEEGrid電極では金(Au)メッキが使用されています。最近の研究では、1Hz~1000Hz帯域での金 (Au) 電極の接触インピーダンスは Ag/AgCl よりも低いということが報告されていることから 金メッキ電極は EEGやEMG 測定などでも有効な電極であると言われています。 (参考文献:Electrochemical performance study of Ag/AgCl and Au flexible electrodes for unobtrusive monitoring of human biopotentials)
最初にcEEGrid 電極が2個(右耳用、左耳用)あることを確認します。 そして 以下の画像のように cEEGrid 電極 1個をアプリケーター容器の溝に合わせて配置します(電極が付いている面を上にします)。その後 cEEGrid用ステッカーの片面シールを剥がして ステッカーの穴がcEEGrid 電極の電極に被らないように貼り付けます。
次に、EEGrid電極をアプリケーター容器から取り出し 電極が上の状態でテーブルの上に置きます。 そしてステッカーの反対側(残りのシール)を剥がします。
その後 下の画像のように シリンジを使って各電極部分の上に電極用ジェルを乗せます。
これらの作業を両耳分のcEEGrid電極に対しておこなってください。
cEEGrid電極の取り付け
被験者にcEEGrid電極を装着します。まずアルコールパッドを使い被験者の耳の周りの皮膚をきれいに拭いてノイズの要因となり得る皮膚上の脂分を拭き取ります。これをすることにより電極と皮膚の間の接触インピーダンスを下げることが出来ます。 髪の毛が挟まらないように、そして耳介 (外耳)に触れないようにcEEGrid電極を耳の周りに貼り付けます。
両耳分のcEEGrid電極を被験者に取り付けると 以下の画像のようになります。
OpneBCI Cyton集録ボードがマウントされているヘッドバンドや帽子を 被験者に被せ cEEGrid電極の端子を端子ソケットに差し込んでください。これで耳脳波測定の準備は整いました。
耳脳波の集録
耳脳波を集録するためにはOpenBCI GUIというソフトウェアを使用します。OpenBCI Cyton集録ボードの電源をオンにして 16チャンネルの設定でOpenBCI ボードの接続が確立したら 「Start Data Stream」ボタンをクリックし集録を開始してください。これにより耳脳波の信号が確認できるようになります。 (※ OpenBCIボードをはじめて使う方は まずOpenBCI Cytonスタートアップガイドをご覧下さい。)
データを記録する前に、信号品質のチェックをおこないます。最初の指標として、すべてのチャンネルが同様の振幅であるかを目視で確認します。cEEGridは各電極が互いに近接しているため、信号は類似しています(完全に同じではありません)。もし信号が0Vを表示していたり 振幅が異常に大きく変動しているチャンネルがある場合は その電極と皮膚の接触を確認する必要があります。チャンネルが0Vである場合、その電極はジェル不足により皮膚と十分に接触していないか または隣の電極とジェルにより短絡している可能性があります。そのような場合は、cEEGrid電極の一部または全体を一度取り外し、電極と皮膚の接触状態を確認することを お勧めします。
更に より正確な信号品質の指標として チャンネルの接触インピーダンスを確認することもできます。OpenBCI GUIの「Cyton Signal」ウィジェットを選択し、「Check all Channels」ボタンをクリックしてください。 これにより各チャンネルの接触インピーダンスが順番に表示されます。 cEEGrid電極が正しく皮膚に接触していれば 接触インピーダンスは10〜50kΩの範囲に収まるはずです。もし接触インピーダンスが高い電極がある場合 その電極と皮膚との接触を確認し 必要に応じてジェルを追加してください。
インピーダンスと信号品質に問題がなければ、「Start Data Stream」ボタンを再度クリックし、耳脳波の信号集録を開始してください。
cEEGrid電極のクリーニング・再利用
cEEGrid電極を使用後 電極のクリーニングを適切におこなえば、 cEEGrid電極 は再利用することができます。
被験者からcEEGrid電極を取り外した後、使用済みの粘着ステッカーを慎重に剝がします。 その際、電極パッドを傷つけないようにしてください。粘着ステッカーを剥がしにくい場合は 少し暖かめのぬるま湯をcEEGrid電極に当てながら 少しずつ粘着ステッカーを剥がしていくとやりやすいです。
ステッカーが剥がれたら cEEGrid電極に付いているジェルをやさしく洗い流してください。 その際に硬いスポンジでこすったり、化学薬品などは使用しないでください。 洗浄後 濡れたcEEGrid電極はティッシュやタオルで軽く拭き、 風通しの良い 直射日光の当たらない場所に保管してください。
電極が完全に乾いたら再利用をすることが出来ます。ただしcEEGrid電極は繰り返し使い続けると電極が劣化をしてきます。測定時に接触インピーダンスが思うように下がらなくなってきたら 新しいcEEGrid電極を使用しましょう。
OpenBCIを使った計測入門
OpenBCIボードを使用して生体信号を測定する方法については、次のチュートリアルを参照下さい。
- OpenBCIを使った脳波測定入門
- OpenBCIを使った筋電図測定入門
- OpenBCIを使った脈拍測定入門
- OpenBCIを使った心電図測定入門
- OpenBCIを使った脳波、筋電図、心電図の同時測定入門