定常状態視覚誘発電位(SSVEP)を活用した食事支援ロボット
概要
事故などで脊髄を損傷したり手足の自由を失ってしまった人は その後の生活スタイルに大きな変化を求められます。 障害の度合いによっては食事や入浴などに介助者からのサポートが必要となり 自分一人で出来ることも制限されてしまいます。 このプロジェクトでは上肢機能障害を持つ障害者が手を使うことなく食事をすることを支援するアシスティブテクノロジーの開発を目指しました。 その第一歩として脳波を活用した食事支援ロボットの開発をおこないます。 ここでは脳波を活用した制御用コマンドとして定常状態視覚誘発電位(SSVEP)を使いロボットアームの操作をおこないます。 ユーザーには異なる周波数で点滅を繰り返す複数ある光源の内の1つを注視してもらい システムはどの光源が注視されているのかを判別します。
システム構成
タスクをおこなう環境には3種類のプラスチック製の食器を置き それぞれの食器の近くに異なる周波数で点滅するLEDアレイを配置します。 使われた周波数はそれぞれ6Hz、7Hz、8Hzです。
食事支援用のロボットアームには各食器に入っている食べ物をロボットアームの先端に取り付けられているスプーンですくい 口元まで運ぶ動作がプリプログラムされています。 つまり3パターンの動作がプログラムされていることになります。
光電として使用されたLEDアレイには5ミリ四方の赤色LEDが8 x 8の配列で並べられています。 LEDへの点滅信号はArduinoから生成されています。
このプロジェクトではOpenBCI Cyton集録ボードを用いて8チャンネル(C1、Cz、C2、PO3、POz、PO4、O1、O2)の脳波信号が集録されています。
EEGデータの信号処理にはMATLABが用いられ、 ハイパスフィルターで信号調節されたフィルタリング後のEEGデータを 高速フーリエ変換を用いて時間領域から周波数領域の信号へ変換しています。 これにより脳波に含まれる特定の周波数を検知し易くし ユーザーがどの光源を注視しているのか判別しています。
システムは今のところ 身体障害のない5人の学生によってテストされていますが まだ開発途中であり 更なる精度の向上が必要とされています。 プロトタイプとして作成されたシステムの様子は以下の動画よりご確認頂けます。